大森さんの田んぼには、南阿蘇の天然の湧水だけが引き込まれています。お米は水田で育つ作物なので、何よりも水の良さがお米の味となります。天然水が湧出する大森さんの田んぼ横にある湧水池を訪ねました。
![]() 田んぼ横にある湧水池。2本の木を中心としてここから天然水が湧出します。 |
![]() 飲んでみたら、どこまでも澄んだ味わいで、大森さんのお米の甘く清らかなおいしさにつながっているのだと感動。 |
![]() 日頃の湧き水への感謝を捧げる大森さん。 |
掛け干しの情熱

「風の谷」南阿蘇村で、近年ではほとんど見かけなくなってしまった天日による掛け干しでお米を生産する大森博さん。
「今まで色々なお米を食べ、色々なお米を作ってきましたが、何よりも天日で掛け干ししたお米が一番おいしいです。」
掛け干しは風通しをよくするために、間隔に余裕を持たせて掛けていきます。刈りとった稲を少量ずつ稲わらで束ねるのも、竹竿に干すのもすべて手作業。大変時間がかかる作業ですが、おいしいお米のためには手間を惜しまない大森さんです。
「掛け干しは、刈り取った稲をそのままの姿で数週間逆さまに天日干しします。そうすることで、葉や茎内に残っている養分がしっかりと穂に集まります。だからおいしいのです。」
稲を丸ごと刈りっぱなしのまま逆さまにして乾燥させるのは、古来からの叡知です。
平野とは一風異なる、田んぼ環境

大森さんの田んぼがある場所は、阿蘇の標高200〜300mの高地ならではの冷涼な気候で、虫がつきにくく、雨も多いため稲作には適した土地です。
以前から除草剤や農薬は使用せず、苗の育つ初期段階におからを使用していた大森さん。これは、おからの分解時に発生する有機酸で、雑草を抑草する目的でした。
しかし、自分が育てるお米は自分の手で何とかしたいと、今では完全な「自然栽培」に切り替えました。
独自の生態系を保つ南阿蘇の田んぼ環境。
気候が冷涼な為、南阿蘇には草を食べてくれるジャンボタニシが生息していません。
主な除草方法は、苗がまだ幼い時期に数回、シンプルな農具で苗間を踏んでいく草踏みです。この作業を行なうと稲の活気が違ってくるそうです。根の周りを踏まれることで根がしっかりとしてくるのです。
南阿蘇の師

南阿蘇に惚れ込んで移住した大森さん夫妻。肥料不使用での栽培に意を決したきっかけは、同じ南阿蘇の自然栽培家の高島和子さんとの出会いでした。
自然栽培米や緑茶などを長年育ててきた農家さんである高島さんの真摯な指導のもと、自然栽培の礎を築きました。
阿蘇に映える夕日

阿蘇山を愛おしそうに眺めながら、大森さんがおっしゃった言葉が忘れられません。
「おいしく、安全で、環境にも負担をかけないお米作りには、手間と努力が必要ですが、あの阿蘇山が夕日に染まる光景を目にするたび、疲れがいっぺんに吹き飛びます!」
大森さんの田んぼには、生命と自然環境の調和がもたらされ、壮麗な景色の中で輝かしいお米栽培の様子がみてとれます。
ササニシキ

口溶けの良さや滑らかな喉越し、クリアな食感と甘みが特徴のお米です。品種の祖先は、うるち米系統です。口に含んだ瞬間にはらりとほぐれる食感、そして噛む程に旨みが増す味わいは「ササニシキ」の大きな魅力です。
米・雑穀