サスティナブルコラム

遺伝子組み換え作物とその表示義務について

遺伝子組み換え作物とその表示義務について

前回のコラムでも触れましたが、種の世界では、「遺伝子組み換えを行った種」というものが存在します。この種は、理論上では蛍の遺伝子を入れたトルコ桔梗やヒラメの遺伝子を入れたイチゴやトマトなど、種の壁を越えたことが可能になっています。1996年にアメリカで本格的に商業栽培が開始して以来、遺伝子組み換え種子から育った遺伝子組み換え作物(GM作物)は日本を始め、世界中で利用されています。
遺伝子組み換えは品種改良と同じ!?

「遺伝子組み換えと品種改良は同じである」という声を聞くことがあります。品種改良は、同種または近縁種の間で交配を行うことであり、作物の遺伝子に直接手を加えるものではありません。身近な例を挙げれば、お米「あきたこまち」は、食味の良い「コシヒカリ」と病害や冷害に強い「奥羽292号」の交配により生まれた品種です。

 

一方、遺伝子組み換え技術とは、ある生物が持つ遺伝子(DNA)の一部を、他の生物の細胞に導入して、その遺伝子を発現させる技術のことです。この技術は、品種改良と異なり目的の性質を効率よく持たせることができます。例えば特定の除草剤に枯れない性質を持った大豆やトウモロコシがあります。除草剤を撒いても雑草だけ枯れるので、栄養が作物に行きわたり収穫量が増えることに繋がります。この技術を利用した主な遺伝子組み換え作物には大豆やトウモロコシのほかに、菜種、綿などがあります。これらは特に、アメリカやカナダ、ブラジルやアルゼンチンなどの南米において大規模に栽培されています。

 

遺伝子組み換え作物に頼る日本

日本では薔薇を除き、遺伝子組み換え作物の栽培は行われていないものの、毎年大量の遺伝子組み換え作物が輸入されています。その国ごとに輸入を許可されている作物は異なりますが、日本で使用が認められているものは以下です。

 

※厚生労働省「安全性審査の手続きを経た旨の公表がなされた遺伝子組み換え食品及び添加物一覧」(令和2年5月26日現在)より

 

じゃがいも 大豆 てんさい とうもろこし なたね わた アルファルファ パパイヤ

 

日本は、年間数千万トンの遺伝子組み換え作物を輸入していますが、その背景には日本における食料自給率が関係しています。とうもろこし(穀物のみ。野菜類は除く)、なたね、わたはほぼ0%、大豆は7%(食用は25%)…と海外からの輸入に頼らざるを得ない状況なのです。輸入した遺伝子組み換え作物は、家畜の飼料として使用されたり、菜種油、大豆油、コーン油などの食用油や醤油、コーンスターチ、コーンシロップなどに使用されています。

遺伝子組み換え作物の表示義務について

「遺伝子組み換え作物を使用した食品は、その旨を表示しなければならないと定められています。表示義務の対象となるものは、加工食品において主な原材料(全原材料の重量に占める割合が上位3位までのもので、かつ、原材料及び添加物の重量に占める割合が5%以上であるもの)にあたるものですが、それにあたらないものは表示が省略できることになっています。
また、製造の過程で組み込まれた遺伝子やその遺伝子が作る新たなタンパク質が技術的に検出できない場合にも、表示義務はありません。例えばこのようなものがあります。

 

醤油 醸造酢 食用油(菜種油、大豆油、コーン油など) 水飴 みりん風調味料

 

上記のようなルールがあることから遺伝子組み換え表示制度では、全ての原材料や食品についての遺伝子組み換え情報が提供されているわけではないのです。

アムリターラでは遺伝子組み換え作物は不使用

アムリターラでは醤油や菜種油を取り扱っていますが、遺伝子組み換え作物は使用していません。また、クレンジングには大豆から抽出した「レシチン」という原料を使用していますが、遺伝子組み換えでない大豆を使用。今となっては貴重な、国内で農薬を使わずに大豆や菜種を育てている生産者さんとの出会い・協力により、遺伝子組み換え作物を使わない商品をお客様にお届けしています。アムリターラ設立当初からそうであったように、今後もこの姿勢は変わりません。

 

【参考文献】
厚生労働省 “遺伝子組換え食品”
農林水産省 “生物多様性と遺伝子組換え(基礎情報)”