伊勢志摩の鰹節づくり
三重県志摩市の波切(なきり)という場所は、歴史深い鰹節の名産地で、朝廷や伊勢神宮への献上をものづくりの源流とし、「手火山製法」にこだわった「波切節」が継承されています。「伊勢志摩 薪いぶし鰹節」は、波切にある歴史ある鰹いぶし小屋で、今も実際に職人の手によって、薪をくべて一本一本燻して仕上げる古式製法によってつくられています。燻製焙乾された鰹節は、同じく昔からの室(むろ)で慎重にカビ付けされ、天日干しと再カビ付けを繰り返すことで熟成し、うまみが凝縮していきます。伝統的な製法により鰹節が仕上がるまでには、大変な手間と時間、ものづくりへの情熱が必要です。燻し小屋や室の年代物の土壁には、燻し仕事や熟成作業が繰り返されたことによる、年月の深みが刻みこまれており、鰹節づくりの歴史が味わい深さを伴って感じられます。燻すための薪の原木であるウバメガシは、伊勢神宮近くの山林から間伐されたものを使用し、炭となったあとも釉薬や染め原料として使われ、山の再生による海の保全といった循環を形成しています。